
今回の大幅アップデートの意味
まず結論を述べますと、2025年6月3日の大幅アップデートは2つの意味を持たせてていると思われます。一つはプロ志向の音楽アーティストに対する音楽ツールとして、もう一つはAIで生成した音楽配信による収益化の課題をクリアするため、と思われます。これらを詳しく解説していきます。
※この記事では【PR】を含んでいます
大幅アップデート内容から推測されるSuno AIの方向性
これまでのSuno AIのアップデートは、主にAIによる「生成能力」そのものの向上に焦点を当ててきました。しかし、今回の大型アップデートは、「クリエイティブコントロールの飛躍」をテーマとしており、Suno AIが単なる「音楽生成ツール」から、より包括的な「音楽制作プラットフォーム」へ進めている方向性がみえます。特にAudio Uploadを8分間までできるようにしたこと、Editでの細かい編集、切り抜き、BPMの変更をできるようにしたこと、Stem機能(ボーカルと楽器のメロディを分離)を大幅に強化したこと、そしてこれらをダウンロードできるようにしているのはその典型と思われます。
つまり何が言いたいかというと、
①自身が持ち込んだ音楽素材や粗々で作った曲をSuno AIにアップロード
②Coverなどで音楽を生成して具体的に音楽を肉付け
③それをEditで細かく編集し、Stem機能で任意の楽器やボーカルに分離・抽出してダウンロード
④DAWでこれらの曲を再編集して自分の曲としてリリース
という過程を経ることで曲の著作権問題をクリアできる可能性が高くなり、課題であった音楽配信での収益化をしやすくなるためです(絶対ではない)。もちろん①と②の代わりに通常のAI生成でも同じことができます。
これを理解するには④の補足説明が必要になります。現在、SpotifyなApple musicで音楽を配信して収益化するにはTuneCore Japan、narasuなどのディストリビューターと呼ばれる会社を通して配信する必要がありますが、ほぼすべてのディストリビューターは100% AI生成の楽曲について配信停止、もしくはその方針です。登録して配信できる楽曲は人間による創作の関与が必要不可欠で、単なるプロンプト入力や簡単なミックス/マスタリングといった「調整」だけではこれらをクリアできません。
ではなぜそんなことをなっているかというと、これらのディストリビューターの役割の一つとして著作権管理があり、アカウント管理者(つまりディストリビューター)が楽曲の著作権を100%管理している必要があります。しかし、Suno AIを含めたAI全般の生成物はどこかしからか情報を引用をしており、場合によっては著作権を侵害しているかもしれない、という著作権の議論が続いています。ディストリビューターはそんなグレーな状況では著作権の100%管理ができないため、著作権の主張ができる「人間による創作の関与」を求めているという訳です。
今回、特に大幅に強化されたStem機能などは任意の楽器を12種類まで分離できるので、AIで楽曲生成して楽しむ層には明らかにオーバースペックな機能です。実際に分離したものを聞いてみましたが今まで以上にノイズなく分離できるようになってクオリティが高くなっているのに驚きました。本格的に音楽を作っている層に向けてこれらを提供することで、より効率化な音楽作りのツールとして使用してもらう、またAI音楽生成では音楽配信ができないと気付いた層がSuno AIから離れるのを引き留める、という効果が見込まれるため、ここからSuno AIが目指している方向性が垣間見えるということになります。
・今回のアップデートは単なる音楽生成ツールから「音楽制作プラットフォーム」への変革
・Audio Uploadや編集機能が強化。Stemでボーカルや楽器の要素を細かく抽出可能に。
・これによって人間の創作関与がしやすくなり楽曲の著作権問題を対応しやすくなった
・著作権問題を解決することでディストリビューターによる配信がしやすくなった
今回のアップデートを活用して音楽配信による収益化するには
上述の通り、配信などにより収益化を目指す人は編集してDAWを覚える必要があります。これらの方法を覚えることはそれなりに難易度がありますが、逆にこれが参入障壁となるため本格的にやりたい人、スキルがある人にはチャンスがでてきたとも考えられます。
「人間による創作の関与」についてディストリビューターによっても異なります。このためどのくらいまで創作に関与すれば問題ないのか、ここまですれば大丈夫かどうかというのは各ディストリビューターに問い合わせが必要になります。
それでもディストリビューターによっては、「人間による創作の関与をしても生成物の著作権が不明瞭であるため」ということで登録を断ったり、「生成AIを使ったものは一切禁止」という強い主張をするところもあります。このためディストリビューターの選定は非常に重要になりますので、そのガイドラインなどはきちんと都度読み込む必要がありますので注意が必要です。
ただ、現状では少なくとも生成した楽曲の編集に手を付ける必要があるため、DAWが必要になるでしょう。具体的に有名なDAWソフトは次の通りです。
【Steinberg Cubase (スタインバーグ キューベース)】
国内シェアNo.1!です。ELEMENTはエントリーモデルで迷ったらコレでよいと思います。
・ 「DAWは初めてだけど、高品質なサウンドで始めたい」
・ 「まずは基本的な機能をしっかりと学びたい」
・ 「将来的にプロレベルの制作を目指すかもしれない」
・ 「信頼性と安定性を重視したい」
という人向けのDAWソフトとなります。
【Ableton Live Intro 12 (エイブルトン ライブ)】
Ableton Liveは音楽のアイデアをブロックのように組み立て、即興で変化させて直感的な「セッションビュー」で可能性が無限に広げられます。Introはエントリーモデルになります。
・「音楽制作に新しいアプローチを試してみたい」
・「即興でアイデアを形にするのが好き」
・「DJやライブパフォーマンスにも興味がある」
・「ループベースの作曲やエレクトロニックミュージックを作ってみたい」
という人向けのDAWソフトになります。
【Apple Logic Pro (アップル ロジックプロ)】
MacユーザーはApple Logic Proが選択肢になると思います。Apple製品なのでApple Storeでの購入のみです。基本的にApple製品は安く購入することはできませんが、裏技的に楽天市場でApple gift cardを購入して支払いをすれば実質的にポイント分を安く買うことができます。細かい話はここに書いています。
![]() | 価格:10000円 |

・配信をするには生成した音楽の編集はほぼ必須
・編集するにはDAWソフトとスキルが必要
・一般人の参入ハードルは上がりつつ、編集スキルがある人にはチャンスが広がった
・それでも生成AIを使った音楽はディストリビューターの方針の確認は必須
編集技術が難しい人には
ディストリビューターの方針をまとめると下記になります。
※都度変わるので必ず自分で確認してください。

このなかでDistroKidのみAI生成要素を含む音楽のアップロードは可能となっており、比較的に寛容な方針をとっています。なりすましはNGですが可能性があるとしたらここのみになります。費用は最安で2.08ドル/月(≒約300円/月)で配信ができます。
学割もあるので、学生がやりたいのでしたらこちらのリンクから飛んでください。
まとめ
今回の大幅なアップデートは楽曲への人間の創作による関与がしやすくなる機能を中心に強化されました。これは生成AIによる楽曲の著作権問題に対応するためと想定されます。
これにより著作権に懸念をもつディストリビューターによる配信がしやすくなり、DAWのスキルがある人、これからチャレンジしたい人にとっては朗報になると思います。
AIは今が黎明期です。黎明期は10年単位でしか出てきません。音楽で収入を考えているけどなかなか花が開かない人、あきらめてしまっていた人、素人だけで新たなに挑戦したい人たちにあらたな門戸を開いてくれる夢のツールになるかもしれません。
コメント